タックを内へ閉じ込

ふりかえってみると、サンウルブズは勝つ可能性が十分にあったと思う。後述するディフェンスの弱さをカバーするために、ポゼッション(ボール保持率)で上回り、前半を僅差で折り返したかったところである。前半16分に茂野が自陣10メートルからPKを速攻した場面(キック不十分で相手FKとなった)が象徴するように、速いテンポで攻めてフォースのスタミナを奪い、後半に勝負を賭けるプランだったはずだ。フォースは後半に弱い傾向があるし、まだ足が動くうちでもリアクションが遅く、隣り合うディフェンダー同士の連係もよくないので、順目にスピードあるアタックを継続すれば数的優位を容易に作れたと思う。主導権を握るのはさほど難しくはない相手だったが、前半にミスや反則で流れを手放してしまい、ドリフトが緩いというディフェンスの欠点を衝かれた。サンウルブズは縦を匂わせながら大きくボールを動かすアタックに脆い。南アフリカのチームは縦か横かがわかりやすいうえに横のムーヴがあまり巧くない分、まだ対処できる。しかし、デコイランナーを使いつつ両方を混ぜてくるアタックに対してはドリフトが緩い分、パスで切られ、内側の1対1で前へ出られるという悪循環に陥ってしまう。ワンパスにプレッシャーをかけながら鋭くタッチへ流す守り方をするのか、それとも外側を上げて相手アめるのか、統一したほうがいいだろう。ときどきカーペンターや山田が外から上がってきたけれども、個人ではなく一直線になって防御ラインで蓋をするようなディフェンスでないと、後ろを通されたときに弱い。攻めのほうは9戦目ということもあり、選手間の連係がかなりスムーズになってきたと思う。速いテンポで攻める時間を長く持てれば南アや豪州の下位には勝機がある。ピックアッププレーヤーはリザーブ組から安藤。ボディコントロールが優れていて、タックルの芯を外すのがとても巧い。曲者として十分に通用することを示した。また、フィルヨーンが元気だ。毎試合、オールアウトでいつも称えておかなければならない選手ではあるが、シャークスで大活躍したころかそれ以上の状態にあるのではないだろうか。もう1人、デュルタロはランニングメーターの個人スタッツが82メートルとBK並みの数字を記録。前へ出る力が目を惹いた。

 フォースの爽快なアタックを久しぶりに見た。秩父宮の一角に陣取ったフォースのサポーターは、めったに見られない精度とスピードに溢れたアタックをまのあたりにして、さぞかし気分をよくしたことだろう。浅草寺あたりへ観光にも出かけたはずで、楽しい東京滞在だったと想像する。フォースに対して僕が抱いているイメージは、ブルーズを弱くした感じ。オフロードパスが大好きで(よく成功していたが、ほかの試合ではもっとミスをする)、野性的にピッチを駆け回るタイプが目立つ。今回、相手防御のプレッシャーが少なくて伸び伸びとプレーできた中、個々の素質は悪くなく、センスのある選手が多いとあらためて感じた。ファンワイクはその筆頭で、パスを開いてもらって堀江を置き去りにしただけでなく、グラバーキックも上手だった。ハードワークのホジソン、フィジカルの強いマッカルマンと3列は充実しているし、プライアーとゴッドウィンがダブルSOのようにしてラソレアやブラーシェのスピードを生かそうとする組み立てもいい。D・ハイレットペティも突破力に磨きがかかっている。ただ、それが結束した力になり切っていない。リアクションの鈍さ、早々にバテが来るフィットネスの不足、順目へ回り込むディフェンス・シェイプの不徹底と課題は山積している。
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